千里同風

千里同風   竜穏庵老師
 澄徹庵老師が岡山から四国へ御巡錫されていた頃の事、老師が散歩に出られた後、急に天候が崩れて土砂降りの雨になったことがあった。侍者が案じながら待ちかねていると、老師がようやくボロ傘をさして帰ってこられた。「親切な人が貸してくれたよ」と笑っておられたが、見るとその傘は何本も骨が折れて、おまけに赤い女柄である。おどろいたが、「明日返して参りましょう。」と申したら「それに及ばず」と云われ、老師はその傘を乾かして翌日ご自分で返しに行かれた。
 後日、物種吉兵衛という妙好人の語録を読んでいたら、よく似た話がのっていた。曰く、隠居様(吉兵衛のこと)が商いに行って、戻りに大雨に出遭うて、途中から半分ちぎれた笠を借りて帰られた。近所の人達の申すには「吉兵衛様、ようそんな笠を貸す人も貸す人や。そのような笠を借りて来なされたナア」と申した。その時に「イヤ、これで雨が凌がせて貰うたワヤ」と申して、その笠を晴天の日によく乾かして、わざわざお礼申して返しに行かれた、と。
 今も昔も、君子は千里同風ではないか。